~1970年代香りでにおい対策! 消臭芳香剤の誕生

エステー化学工業(現・エステー)
「エアーシャルダン」
(1971年発売)
“香り”のはじまり
香料は6世紀の飛鳥時代に仏教伝来とともに日本に伝えられ、初めは供香(そなえこう)として仏前に用いられるなど、宗教的な要素が強かった。平安時代になると、宮廷を中心に、部屋や着物に香をたく風習が盛んになっていったが、香の素材などは高価なもので、広く庶民が用いるようなものでもなかった。
庶民が香料を化粧に用いるなど、身近な存在となるのは江戸時代に入ってからのこと。江戸初期の庶民は、芳香化粧品として鬢付け油を愛用していたが、中期になると香油が芳香化粧品の中心となっていった。
日本初の消臭芳香剤
明治時代に入ると、急激な近代化のなかで、疫病や環境汚染が広がり、また、人口流入により都市部での悪臭の発生などの問題が起こっていた。国策として対応していくなかで、日本人の衛生観念が徐々に高まりをみせていった。それと同時に、西洋からの“香り文化”の流入によって、生活用品などにも香りが定着していくこととなる。
そんななか、戦後の高度経済成長期に突入すると、水質汚染、大気汚染が増大し、人々の生活環境や健康を脅かす要素をもたらした。環境汚染が進み、下水道の整備が不十分であったことも影響し、悪臭が町中に漂うという事態も。また、当時はどの家庭でもトイレのにおいが当たり前のように生活空間にも影響していた。その後、住宅の気密性を高めるために、徐々に下水道の整備が進んでいったが、トイレのにおいが消えた家庭と、いまだ下水道処理ができていない家庭のばらつきがあった。こうした中、家庭内でにおい対策のニーズが出てきたと考えられている。
このような環境の中で、1970年代初頭に、におい対策として登場したのが消臭芳香剤である。室内用消臭芳香剤として、1971年にエステー化学工業※1981年まで(現・エステー)がスプレータイプの「エアーシャルダン」を発売。当時としては販売価格が高く、高級品のようなスタンスで、“お部屋の香水”といった位置づけで売り出していった。同年、トイレ用の「シャルダンエース」も発売する。
その後、トイレ用の消臭・芳香・脱臭剤として、1975年に「サワデー」(小林製薬)、1978年に「ピコレット」(藤沢薬品工業)などが発売され、徐々に消臭・芳香・脱臭剤の市場が形成されていった。
今でこそ液体タイプが主流ではあるが、当時はゲルタイプが主な商品だった。液体タイプも一部はあったが、液体をしみ込ませる繊維がすぐに乾いてしまうという問題点があった。しかし、当時の主流とはいえ、ゲルタイプは最後にゲルが少量残ってしまい、使い終わりがわかりにくいという課題もあったため、「液体タイプでもしっかり香りが維持するものを!」と試行錯誤し、1978年にエステー化学工業(現・エステー)が当時としては珍しい液体タイプの「シャルダンリキッド」を発売し、爆発的なヒットを記録する。
1970年代の消臭・芳香・脱臭剤については、次第に自然に近づくという意味での無臭、マスキング効果が期待されており、香りには消臭という機能的価値が求められていた。まだ香りを楽しむという目的はそれほど大きくなかった。



