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マスク歴史市場シェア

2025年12月26日歴史・グラフ更新

2020年代~パンデミックとマスク

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の発生

2020年1月3日、中華人民共和国・湖北省武漢市で原因不明の重症肺炎が複数報告された。日本では、1月15日に国内最初の新型コロナウイルス感染症患者が確認された

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、非常に強い感染力をもち、感染者の20%は症状が現れていなくても感染源となる無症候性病原体保有者であるとされる。急性期症状として発熱やせき、全身倦怠感、頭痛やのどの痛みなどを訴える人が多い。特徴的な肺炎を起こすことがあるほか、疲労感や息切れ、味覚障害、記憶障害、集中力の低下などを含む多様な症状の罹患後症状(後遺症)を残す場合もあり、ヒトへの長期的な影響が十分解明されていない新興感染症である。

発生当初、専門家達が情報収集を急ぐなか、世間の耳目を集めたのが、1月20日に横浜港を出港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(DP)号」での大規模集団感染である。予定を早めて横浜港に停泊したDP号ではDMAT(災害派遣医療チーム)による船上検疫や陽性者の搬送などが行われたが、乗客の中からは死亡者も発生した。緊迫した現場の状況はニュースやワイドショーなどで連日報じられ、未知の感染症に対する危機感が国民の間でも徐々に高まっていった。

国内での対応

2020年1月30日、WHOにより国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)が宣言され、国内では2月上旬、感染症法において指定感染症として定められた。これ以降、14日間の検疫や疑い例への全数検査、感染経路の追跡、陽性者の入院(軽症者は指定宿泊施設での隔離)体制が敷かれることとなった。

マスクに関連した最初の動きとして、1月28日、厚生労働省が、日本衛生材料工業連合会などの業界団体に、マスクの増産や適正な流通確保等を要請するほか、薬局関係団体に対しても、マスクの過剰な発注や買い占め等を控えるよう要請した。

マスクの世界的な供給不足

しかし、2月に入ると、店頭からはマスクの姿が消えていった。パンデミック以前、国内で流通していたマスクの8割程度を主に中国からの輸入に頼っていたところに、世界的な需要が拡大したためだ。

マスクの欠品が続くなか、2月25日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を公表。「閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある」などとし、国民に対して「手洗い、咳エチケット等を徹底し、風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず外出する場合にはマスクを着用する」ことを要請した。

さらに3月10日、政府は関係省庁で構成される「マスクチーム」を創設。国や自治体が購入、または保持しているマスクを、医療機関や高齢者施設に優先的に配布するなどの調整を行った。

しかし、いわゆる「転売屋」による買い占めや高額転売が後を絶たず、マスクはさらに入手困難な状態となっていた。政府が転売目的での購入やオークションへの出品取りやめを訴えたものの状況は改善せず、3月15日から、国民生活安定緊急措置法施行令により、購入価格を超える転売を禁止した。ドラッグストアへの入荷も厳しい状況が続き、整理券を配布しての販売や、マスクを購入できない来店者への対応に追われた。

3月以降はイタリア、イギリス、アメリカなどでも感染が急拡大、記録的な感染・死者数を更新。マスクをはじめとする衛生材が世界的な供給不足となり、感染病棟でも本来は使い捨てのマスクや防護服などを何度も使用せざるを得ない深刻な状況に陥った。

緊急事態宣言と「新しい生活様式」

2020年4月7日、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき、最初の「緊急事態宣言」が発出された(対象となったのは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県)。外出自粛や休校、商業施設の利用制限、飲食店への休業要請なされたほか、各企業はリモートワークの環境整備に追われた。その後4月16日には全国が対象となり、5月下旬に解除されたが、翌2021年9月までの間に断続的に発出された。

ここで時間を少しさかのぼる。緊急事態宣言発出前の2020年4月1日、政府は、医療機関や高齢者施設への不織布マスクの供給を優先するため、各世帯に2枚ずつの布マスクの配布事業を発表。到着後には不良品が相次いで報告されるなど混乱が見られた。5月以降、各メーカーの増産体制が整うなどし、不織布マスクの供給不足は徐々に解消されていった。この頃、不織布マスクの供給不足の影響として、アパレルメーカーから布マスクが販売されたほか、思い思いの布でマスクを自作する人も散見された。

2020年5月4日、緊急自体宣言の解除を視野に入れ、政府専門家会議が国民に向けて「新しい生活様式」の提言を行った。この中でも「外出時や屋内でも会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスクを着用する」ことを要請した。

パンデミック期に登場したマスク

パンデミック初期、各メーカーは政府からのマスク国内生産強化の要請への対応に追われたが、注目を集めたのが意外な企業の動きだった。2020年2月末、液晶パネル製造用のクリーンルームを擁するシャープが、政府からの要請を受け、マスクの生産を決定。4月末からオンラインストアでの抽選販売を開始した。

また、以前から中国産マスクを販売していたアイリスオーヤマが、政府の要請を受けて2020年3月には国内生産の増強を目指し、7月初旬から国内産プリーツマスクの出荷を開始するなど、さまざまなメーカーがマスク不足の解消に貢献した。

さらに、マスク不足が解消されると、ニーズにも変化が生じた。ファッション性を備えたマスクを選ぶ人が増えるようになったのだ。

興和 三次元ダイヤモンドマスク (2022年)

2021年頃から店頭に現れたのが、口元に空間を作る立体くちばし(ダイヤモンド)型のマスクである。カラーバリエーションが豊富で、口元の空間が広く呼吸がしやすいことから注目を集め、2022年には、「三次元ダイヤモンドマスク」(興和)が発売された。


La Bella CICIBELLA 3DバイカラーマスクCタイプ (2022年)

また、女性に根強い人気を集めているのが、フェイスラインを美しく見せる立体型で、耳掛けゴムと本体がバイカラーになっているタイプ。「シシベラ」(La Bella)も、コロナ禍を契機に売上げを伸ばしたブランドの一つである。

マスクのJIS規格が制定

マスクの世界的な需要拡大と原料・品不足のために、一時期は粗悪品も出回ったが、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらしたのは悪い影響だけではなかった。2021年6月、厚生労働省は、マスクに関する日本産業規格(JIS T 9001及びJIS T 9002)を制定し、医療用および一般用マスクの性能と、その試験方法を標準化した。マスクの品質と安全性が客観的に担保されることで、医療従事者や生活者は自分のニーズに適したマスクを選びやすくなり、メーカーにとっても、より信頼性の高い商品で他社との差別化、ブランドイメージの向上を図ることができるようになったのだ。

感染拡大防止の要として

「新しい生活様式」の提言から3年後の2023年3月13日、感染症法上の分類が5類に移行することに先立ち、「マスク着用は個人の判断が基本」とされた。ただし、混雑した公共交通機関や医療機関の受診、高齢者施設訪問時や、高齢者や妊婦ではマスクの着用が推奨されているほか、症状がある場合はマスクを着用するようにとの記載がなされている。

COVID-19パンデミックにおけるマスクの動向(2020~2023)

2020年
1月
  • 国内で最初の陽性患者を確認
  • 厚生労働省や経済産業省から業界団体に対して、マスクの増産を要請(1月28日)
2月
  • マスクの品切れが目立ち始める
  • 「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」で外出時のマスク着用を要請(2月25日)
3月
  • 国民生活安定緊急措置法施行令により購入価格を超える転売を禁止
4月
  • 政府が「布マスク配布事業」を開始。不良品報告が目立つなど課題も
5月
  • 政府専門家会議が「新しい生活様式」の提言を行い、屋内でのマスク着用が原則となる
2021年
6月
  • 医療用および一般用マスクに関する日本産業規格(JIS T 9001及びJIS T 9002)が制定される
2023年
5月
  • 感染症法上の分類が5類に変更。着用は個人の判断となったが、引き続き推奨されている場面も

今回のパンデミックを機に、感染予防と治療などについて世界中でさまざまな研究が進んでいる。国内でも、理化学研究所が文部科学省と連携して実施したスーパーコンピューター「富岳」によるエアロゾルシミュレーションによって、ウイルスを含んだ飛沫がどのように拡散するか、マスクの適切な着用によって吐き出し・吸い込み飛沫が効果的に減らせることも確認されている。本稿の冒頭で紹介した通り、日本では1919年スペインかぜでマスクの着用が習慣化したとされているが、100年後に生じたパンデミックによって、その効果が科学的に証明されつつあると言えるだろう。

マスクの効果

(スーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーション結果)
対策方法
吐き出し飛沫量
吸い込み飛沫量
なし
100%
100%
不織布マスク
20%
30%
布マスク
18~34%
55~56%
ウレタンマスク
50%
60~70%
※豊橋技術科学大学による実験値実験(マスクは厚生労働省が示す正しい着用方法に基づいています) さまざまな素材のマスクを着用した人頭モデルにミスト生成装置を接続し、飛沫の飛散状況をレーザー光を用いて可視化、カウントしました。吸い込み時の計測は実際に人がマスクを着用。飛沫の直径は、0.3μm(小さな飛沫)から200μm(大きな飛沫)まで計算しています。 結果吐き出し:飛沫量は不織布、布ともに8割が捕集されます。
吸い込み:不織布マスク着用時、マスクと顔に隙間がある場合でも上気道(鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭)への吸引飛沫量を1/3にすることができます。
出典:国立大学法人豊橋技術科学大学、株式会社全音楽譜出版社
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新型コロナウイルスは、現在も変異しながら夏と冬の流行を繰り返している。また、インフルエンザなど従来から存在していた感染症の流行パターンにも変化が見えるという声もある。

新興感染症のパンデミックは、人類にとっては起こってほしくない事態だが、こうした危機は、新たな知見の獲得や技術革新など、さまざまな進歩を促す好機でもある。人々や社会を感染症から守る要の一つであるマスクカテゴリーの動向について、今後も注目していきたい。

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