2010年代~唇の健康と美しさを兼ね備えて

2010年代に入ると、リップクリームは「唇を美しく見せる」アイテムとなった。色付きリップクリームが“メイクアイテム化”する一方で、健康で美しい唇を目指すための集中ケアも本格化する。

2008年9月にニベア花王が発売した「ニベアウォータリングリップ ナイトパック」は、寝る前に塗って唇をケアする、チューブタイプのリップ。近江兄弟社の「近江兄弟社メンターム 薬用メディカルリップスティックM」は、口角炎・口唇炎の効能がある指定医薬部外品のリップとしては初のスティックタイプ(近江兄弟社調べ、2012年8月)。また、少し遡るが2008年9月にユースキン製薬が発売した「メディリップ」(現:「リリップキュア」)といった第3類医薬品のリップクリームも増えており、唇の健康を守るニーズが高まっていることがうかがえる。

2010年代後半からは、リップクリームのトレンドが高保湿にシフトするとともに、濃厚な塗り心地のものが増えている。2017年にロート製薬が発売した「メンソレータム メルティクリームリップ」シリーズは、スティックなのに塗るとクリームのようにとろける。また、2020年にニベア花王が発売した「ニベア ロイヤルブルーリップ しっとりもっちりタイプ/しっとりなめらかタイプ」は、「大人のための最高保湿(※現ニベアリップスティック内)」を謳い、高保湿とくすみをぼかす効果で唇を美しく見せる。
一方で、ロート製薬が2011年に発売した「リップフォンデュ」シリーズや近江兄弟社が2013年に発売した「リップドレス」シリーズ(2018年8月、「リップドレスティント」にリニューアル)、2016年にニベア花王が発売した「ニベア リッチケア&カラーリップ シアーレッド/フレンチピンク/スモーキーローズ」、2023年に花王が発売した「キュレル リップケア クリーム 美発色 レッド/ピンク/ベージュ」などのように、リップクリームなのにまるでメイクアイテムのような色やツヤを訴求する商品も増えている。それまで、色付きリップクリームは「メイクができない・するほどではないシーンでの代替アイテム」であったと考えられるが、技術の進歩によって発色やツヤ感が口紅と遜色なく、かつ基本機能である保湿力は高い、という、口紅とリップクリームのいいとこどりの商品に進化している。
2020年頃からの新型コロナ禍におけるマスク生活で、女性のメイク用品、とくにマスクで隠れる口紅の消費は激減した。リップクリームも一時はシュリンクしたが、口紅をつけないまでも、飲食などでマスクを外したときに少しは色づいていたほうがよいと考える女性が色付きリップクリームを選んでいたという声も聞かれた。事実、近江兄弟社の「リップドレスティント」シリーズは、ティント処方のためマスクをつけても落ちにくいというアピールを行っている。
2023年9月現在ではマスク生活が終息に向かいつつあり、リップクリーム市場にもまた新たな展開が期待される。