1970年代リップケア市場の好敵手として

リップクリームの基本的な機能は唇の保護・保湿であることは議論をまたないが、1970年に伊勢半が発売した「キスミーシャインリップ」は“ツヤ出し専用リップ”と謳っており、基本的機能よりも付加価値のほうを前面に出して訴求した例としては初期のものではないかと思われる。
一方、唇の保護を謳う商品としては、近江兄弟社がアメリカのメンソレータム社より商標権を取得して発売していた薬用リップクリームが人気を博していた。しかし、近江兄弟社は経営不振により、1974年に商標権をメンソレータム社に返還し、この商品は販売を終了する。

その頃、ロート製薬は創立から約25年を迎えるにあたって、スキンケア事業に本腰を入れようとしていた。そのタイミングで「ご縁があった」というメンソレータム社の商標専用使用権を取得することができ、1975年に「メンソレータム薬用リップスティック」を発売する。

しかし近江兄弟社も、そこで終わったわけではなかった。 経営再建の途を歩む同社は、独自の技術で新たに「近江兄弟社メンターム薬用スティックレギュラー」を発売。なお、この商品は、当時の近江兄弟社社員がアメリカ訪問時に目にした商品の包装仕様を採り入れた、日本初のブリスターパック仕様のリップであるといわれている。当時、リップスティックは包装なしのままバラで販売されていたため万引きに遭いやすく、レジ横にしか置けないという声も多く聞かれていた。リップスティックをブリスター仕様にして販売することで、盗まれにくくフック展開もできると考えて導入したことが、販売拡大にもつながった。
一方ロート製薬は、「メンソレータム」ブランドの拡充を図った。1979年に発売された「メンソレータム薬用キャンパスリップ」は、10代~20代の獲得を目指した商品で、同社では初の香り付きリップスティック。また、若い女性がポケットやポーチに入れて持ち歩くことを想定し、パッケージもかわいらしく彩った。同年、近江兄弟社も香り付きリップスティック 「近江兄弟社メンターム薬用スティック ミンツ/ストロベリー」 を発売している。
こうして「メンソレータム」と「メンターム」は、お互いに切磋琢磨しながらリップケア市場を牽引していくブランドとなっていく。