2020年以降~「見かけない環境を作る」時代へ

「そもそも見たくない」の境地へ
時代が進むにつれ、害虫全般に対して「見つけてから退治」するよりも「害虫がいない空間」へのニーズが高まっていき、ゴキブリ用殺虫剤でも、2020年代以降にそうしたニーズにフィットする商品が登場している。

2020年に発売された「ゴキブリムエンダー」(大日本除虫菊)は、「くん煙剤の効果を、煙を出さずに手軽に得られる」という空間噴射式のゴキブリ駆除剤だ。小さなエアゾール缶を部屋の広さに応じてプッシュすると、30分締め切るだけで薬剤が部屋の隅々にまで行き渡り、ゴキブリを駆除できる製品で、従来にはなかったカテゴリーを創出した。リビングダイニングが一体になったマンションなどでも使いやすいため、準備や後片付け、処理中の退避が必要だったくん煙剤・くん蒸剤にかわる駆除剤として、家事に「時短」を求める共働き世代を中心に支持され、売れ行きを伸ばした。
先に紹介したフマキラーの「ゴキブリワンプッシュ」は、同社の「おすだけベープスプレー」の、大日本除虫菊の「ゴキブリムエンダー」も同社の「蚊がいなくなるスプレー」の研究成果を応用した商品となっており、新たなゴキブリ駆除剤の登場は、各社の蚊取りの進化に後押しされていることが窺える。2023年には、窓を開けたままでも使え、ゴキブリ駆除とすき間での予防ができるワンプッシュタイプの殺虫剤「ゴキッシュ スッ、スゴい!」(アース製薬)も発売された。
新成分<ブロフラニリド>の登場

「ゼロノナイトG ゴキブリ用 くん煙剤」と「ゼロノナイト ゴキブリ・トコジラミ用ワンプッシュ」(アース製薬)
2023年には、新しい殺虫成分を採用した商品も登場した。それが「ゼロノナイトG ゴキブリ用 くん煙剤」(アース製薬)だ。 殺虫成分の「テネベナール」(ブロフラニリド)は、三井化学クロップ&ライフソリューションが開発、2021年に防除用医薬部外品として承認されたもの。ブロフラニリドはピレスロイド系殺虫剤と機序が異なり、従来の薬剤に抵抗性を示すゴキブリにも効果を表すほか、光や熱に強い、常温での揮発性が低く薬剤の持続性が高いといった特徴をもつ。そのため、「ゼロノナイトG ゴキブリ用 くん煙剤」は、一度の使用で1年間効果が続き、卵から孵化した幼虫や、侵入してきたゴキブリも駆除でき、発生予防効果も期待できるのが特徴だ。
2024年には「テネベナール」(ブロフラニリド)を配合し、すき間にスプレーするタイプの「ゼロノナイト ゴキブリ・トコジラミ用ワンプッシュ」も発売し、ラインナップの強化を図った。「テネベナール」(ブロフラニリド)は数時間から数日かけて致死性を表すため、激しく動くゴキブリの姿を見たくない生活者にも訴求しやすいという。
戦後から70年あまり。不衛生なだけでなく、不快な姿との戦いでもあったゴキブリ用殺虫剤の歴史は、他の害虫と同様に、「そもそも見たくない」というニーズに応える段階を迎えているようだ。
今後も、各社がそれぞれの強みを活かした商品を発売していくものと思われる。近年登場したような「従来よりも効き目が高く、より便利なアイテム」も、一見近しいように見えても、メーカーや商品ごとに訴求ポイントが異なっている。より満足度の高い商品提案ができるよう、最新の動向をチェックするとともに、取扱商品の違いを把握しておくとよいだろう。