2010年代~若い人との交流も増える

「若く見られていたい」層にアピール
2010年代になっても高齢者の雇用拡大路線が継続する。2012年には、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正。60歳で定年を迎えた社員のうち、希望者全員を最長で65歳まで雇用することを義務付けた。この定年の引き上げは、シニア世代の長時間の外出が増えることに繋がる。これと連動するかのように2016年1月から、経済産業省では経済施策を決める生産動態統計調査の項目に「紙おむつ」を新たに加えた。
政府としても単なる寿命を延ばすのではなく、寝たきりではない活動的で健康的な寿命「健康寿命」を延ばすことに主眼をおいた政策を推し進めてきた。「高齢者=寝たきりの介護」から、「元気に活動する高齢者」へとイメージも変わってきた。実際、健康意識の高まりなどもあり、平均寿命の延伸とリンクするように、以前と比べて若々しく活動的な高齢者が増えているように見える。
これまでは、高齢者同士で集まることも多かった付き合いの場も、世代を問わず集まることが増え、高齢者と若い世代との交流も増えてきた。こうしたことから、従来はいわゆる“介護用の”おむつがメインだった大人用カテゴリーで、活動的な人向けの軽失禁対応のパッドやパンツなどの需要が増えてくる。以前は、「薄型」「漏れない」「動きやすい」といった機能が第一に求められていたが、これらはすでに当たり前の基本仕様となっていた。「リリーフおでかけパンツ」(花王)に始まった「気づかれたくない」「いつもの下着のように」というニーズへの対応から、現在ではさらに高度な要望に対応すべく技術開発が進められているようだ。とくに人の目に敏感な女性は、「若く見られていたい」とできるだけ下着に近い、おしゃれな商品を選ぶようになったため、おむつの下着化が進んでいる。

そんなニーズに向け、2016年には、「失禁症状に不安をもちながらも、紙パンツを使用していない人でも抵抗なくはける」ことをコンセプトとした「アテント スポーツパンツ」を大王製紙が発売。新素材の全面伸縮フィルムを採用することで、布の下着により近い履き心地の紙パンツを実現した。

また、2018年に花王から登場した「リリーフ まるで下着ローライズ」は、単なる薄型の下着タイプにとどまらない商品だ。パッケージを見ると、もはや「介護」「高齢者」という印象は微塵も感じられない。活動的な人のために、ウエストから下着がはみ出ないことに主眼が置かれている。
さらに、2019年にはP&Gが女性用の尿漏れケア用品の新ブランド「ウィスパーうすさら」を立ち上げた。これは、2018年に販売を終了した生理用品「ウィスパー」のブランド復活を意味する。女性が店頭で購入するのに抵抗がないように、パッケージデザインにもこだわったという。

もちろん、介護本来の機能を充実させた商品も開発されている。2020年にユニ・チャームが上市した「ライフリー 歩行アシストパンツ」は、その名のとおり、歩行をアシストする機能をもった初めての商品だ。薄さを保ちつつ、体幹のバランスを保つ機能をもっている。

2022年、大王製紙は「アテント」ブランドの一部の商品パッケージをリニューアルした。購入者の「持ち帰るときに恥ずかしい」「パッケージをもっとおしゃれにしてほしい」などの声をもとに、手に取りやすく持ち歩けるデザインを採用。シンプルなデザインでありながら、選ぶときに必要なサイズや吸収回数などの情報が記載されている。店頭でのわかりやすさと店外での持ち歩きやすさを両立したパッケージとなっている。
大人用紙おむつは、ドラッグストアの商品のなかでもとくに母数が拡大しているカテゴリーであり、市場が成熟するにつれてニーズは細分化している。こうした高機能な商品、多機能な商品は、これからも数が増えてくるだろう。
65歳以上の人口は、 2024年時点で総人口の29.1%を占める。国立社会保障・人口問題研究所(2023年4月公表)によると、今後も65歳以上の人口は増加傾向が続き、2037年には33.3%となると見込まれ、国民の3人に1人が65歳以上になるという予測がある。今後さらに高齢化は続くが、医療の発達により「健康寿命」が延び、さらに多くの高齢者が社会で活躍することになるだろう。もはや社会が高齢者を支えるのではなく、高齢者が社会を支えるという時代になるのかもしれない。そんな有望なカテゴリーとして、今後も注目しておいたほうがいいだろう。