1970年~2枚刃の登場~多枚刃戦争の行く先

約70年目の変革

海外勢が日本のカミソリ市場に本格的に乗り込んできてほどなく、1971年にジレットは世界初の2枚刃「トラクLL」を発売。ジレット初の商品から約70年経ったこの年、それまで1枚刃だった安全カミソリは大きな転換期を迎えた。現在まで続く多枚刃商品の発端となったエポックメイキングな商品といえるだろう。
これに続くように、シックは1972年に2枚刃の「スーパーII」を、貝印も1974年に同じく2枚刃の「ビジネスマン002」を発売した。

一方、カミソリの進化は、剃るときの補助となるシェービング剤などの進化も促進する。花王は、女性用化粧品などで長年培った知見を生かし、1987年に「サクセス」ブランドを立ち上げ、1988年にシェービングフォームが登場。その後、1989年には、電気シェーバー用だが、「サクセス」の新たな提案として「プレシェーブローション」を上市した。この商品はロングセラーとなり、当時とほぼ同じデザインを踏襲して今に至っている。さらに、新機軸を追求した花王は、当時はそれほど主流ではなかったジェルタイプに目を向ける。肌になじんで垂れてこない、ひげをやわらかくできる、カミソリの滑りを良くする、石けん成分を除去した中性で肌にやさしい、といった利点をもつ、サクセス「シェービングジェル」を1996年に発売した。大手メーカーとしては最初のジェルタイプとなり、その後、多枚刃競争の時流にもあと押しされ、シェービングの際の主力アイテムとなっていく。なお花王では、ジェルタイプを使う際は、肌に水分が補給されるよう、使用前に洗顔することを推奨している。
熾烈を極める開発競争

その後、しばらくは2枚刃の時代が続くが、初の登場からさらに30年近く経った1998年、貝印は約2年の研究開発を経て、世界初の替刃式3枚刃カミソリ「K-3」を発売した。貝印は、海外勢の進出により使い捨てカミソリにシフトしていたが、国外での拡販も狙っていた。この商品の登場で、貝印の名は世界に知られることになる。毛ガニの毛を剃るCMも話題となってこの商品は大人気となり、バックオーダーが数カ月というほどだった。

わずかに遅れをとったが、ジレットも同年に3枚刃の「マッハ3」を発売。これを追うシックも、2002年に曲がる3枚刃システムを導入した「トリプルエッジ」を発売する。そして2004年、世界初の4枚刃カミソリ、「クアトロ4」(シック)が登場する。同品には、横滑りによるけがを防ぐためのワイヤーが付いており、さらにもみあげなどを剃ることができる「デザインカッター」も刃の裏に用意されていた。負けじと貝印も同年に4枚刃の「K-4」を発表と、多枚刃の商品が次々と上市された。

この競争に終止符を打つべく、ジレットが2006年に発売したのが、世界初の5枚刃+ピンポイントトリマーが搭載された「フュージョン 5+1」だ。ジレットの場合、3枚刃から5枚刃への一足飛びとなるが、「マッハ3」を上市後、「既存製品に対して優位性が十分大きく、数字的に証明できて、かつ意味があるか」を検討したという。そして、自信を持って出したのが4枚刃ではなく5枚刃だったというわけだ。

すると貝印も2008年に、5枚刃の「KAI5」、国内初の5枚刃使い捨てカミソリ「プレミアムディスポ5」を発売するなど、わずか10年の間に3枚刃~5枚刃へと急激に進化することとなった。

実はこの間にも、刃の枚数だけではない特長を備えた商品が登場している。面白いのは、電気シェーバーでもないのに、乾電池を内蔵する安全カミソリが出たことだ。振動させることによって、痛みを感じさせにくく、かつあまり力を入れずに軽く剃れる、というものだ。2004年には乾電池で振動させる仕組みを採用したカミソリ「M3パワー」がジレットから、2005年には振動ヘッドがついた「クアトロ4エナジー」がシックから登場している。

当然、この多枚刃商品群の登場は、シェービング剤の動向にも影響する。2006年、花王は逆剃りできるシェービングフォームとして、「サクセス 薬用シェービングフォーム」を発売した。男性のひげの剃り方の実態をみると、逆剃りのほうがよく剃れるとして実践しているユーザーが多かったが、逆剃りは肌への負担も大きい。そこで、保護膜、泡、抗炎症剤などを吟味し、カミソリ負けしにくい設計の商品が誕生した。こちらもロングセラーとなっているが、処方自体は2006年以降ほとんど変えていないという。