2010~2020年代供給拡大は重要な政策課題に

スマイルケア食の普及推進を図る
2010年代に入ると、高齢化社会の進展とともに、介護栄養補助食品の市場規模はさらに拡大していた。一方で、多様な民間の規格基準が多数存在し、何を選べばよいかわかりにくいという問題も生じていた。
そんななか、2014年、農林水産省が動き出す。いわゆる介護食品と呼ばれてきた食品の範囲の統一的な基準を示すため「新しい介護食品」として、再整理を始めた。これが以下の通りである。
- 飲み込む機能に問題がある人向けの食品
- 噛む機能に問題がある人向けの食品
- 上記の機能に問題はないものの、健康な体を維持し活動するために必要な栄養の不足の予防につながる食品
その後、それぞれの状態に応じた新しい介護食品の選択に寄与する早見表を整備したほか、公募により愛称を「スマイルケア食」に決定。翌2015年から、スマイルケア食に該当する食品の規格基準を制定し、該当食品にマークを表示するなど、スマイルケア食の普及推進を図っていった。
※参考:農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」
進化を続ける介護食
介護栄養補助食品市場の活性化にともない、店頭展開として足り得る商品が求められるようになってきていた。

2014年、明治はこれまでの紙パッケージからブラッシュアップし、カップタイプの「明治メイバランスMiniカップ」を発売する。独自の無菌カップの充填設備を備えた新工場を建設、さらに良い商品を提供していくというねらいで、カップ容器を用いたことで損傷リスクが減り、賞味期限がさらに長くなった。ドラッグストアでの採用率もかなりアップし、生活者にも浸透、ヒット商品となる。

キユーピーは、2019年に電子レンジに対応したカップ容器入りの「なめらかシリーズ」を発売する。当時はパウチがメインだったが、実際の使い方を調査してみると、器に移さずに、パウチから直接食事を口へ運んでいるケースが多かった。そのため、カップから直接食べられるように開発。湯煎ではなく、電子レンジですぐに使える容器は、発売後市場の反応は良かった。しかし、パッケージがコンパクトなため売り場であまり目立たないこともあったという。容量を大きくしたり、形態を変えたりして、現在も進化を続けている。

一方、とろみ調整食品の市場規模は着実に拡大していたが、その一方で、飲み物を飲み込みやすくするためにとろみをつけることだけでなく、ゼリーにすることの研究も進んでいた。一般的なゼリーの作り方は、飲料にゼラチンやゼリー食調製食品などを加えて、加熱・冷却するのでとろみ調整食品より手間がかかることが課題であった。そこで、日清オイリオグループは、これらのニーズに応え、水やお茶にまぜるだけでゼリーになる加熱・冷却不要のゼリー食調製食「あっ!というまゼリー」を2015年に発売する。

また、日清オイリオグループは2022年に入ると、これまで病院や施設で発売していた、飲み込みに配慮したプリン形状の「エネプリンプロテインプラス」を市販化。40グラムで160キロカロリーという、食べ残さない量でしっかり栄養補給できるサイズとカロリーで、甘くない味へのニーズにも応え、豆腐味やポテトサラダ味もラインナップしている。また、常温で1年半もつことから、災害備蓄用としてもおすすめできるようになっている。

同年、明治は「明治メイバランスMICHITAS(ミチタス)」を発売(現:「明治MICHITAS」)。普段の食事に加えることで栄養バランスをサポートする商品。「メイバランス」は食事で栄養が摂れない方や低栄養の方向けに対し、「MICHITAS」は健康維持を目的とする方におすすめできる。

2025年9月、アサヒグループ食品は、2017年から展開していた「バランス献立」をリニューアルし、「まんぷく日和」として新たなスタートを切った。体の機能が衰え少し食べづらさを感じ始めた方にも「食を楽しんでもらいたい」という想いからメニュー開発が行われ、介護食品ではあまり見ないナポリタンやソーキそば、ポトフなどの多彩なメニューをラインナップしている。
各メーカーとも、栄養バランスのサポートはもちろんのこと、おいしさや見た目にもこだわり、「食べる喜び」や「食べたい気持ち」を呼び起こす商品開発を進めている。
市場の変化と社会的ニーズ
近年、介護する側のライフスタイルの変化から、時短や調理簡略化の需要の高まりを背景に、レトルトパウチ入り商品を中心に多くの商品が店頭に並ぶようになってきている。新規参入メーカーも見られたり、電子レンジに対応した商品が発売されたりするなど、新たな価値提案によって市場は活性化している。
フレイル(虚弱)、サルコペニア(筋肉量の減少)予防に対する関心の高まりも、市場拡大を後押ししている。5年ごとに改定される「日本人の食事摂取基準」の2020年版では、高齢者の低栄養・フレイル予防などを目的として数値などが見直された。さらに2025年版ではフレイル予防に加えて骨粗鬆症予防が盛り込まれていることから、今後も高齢者の筋肉や骨の健康を保つためのたんぱく質、カルシウムなどの栄養素摂取が重要視されている。また、残食率の低減を目的とした小容量・高栄養商品の需要が増加して、各メーカーとも商品開発や訴求の強化が市場全体の流れの一つとなっている。
日本の介護栄養補助食品へのイメージは、介護は大変なもの、できればタッチしたくない、という考えがあり、それをどう払拭し、ポジティブなものにしていくかが業界としての課題となっている。介護食品の利用は、介護される方の栄養状態やQOLを向上させるだけでなく、介護する方の負担を減らし、時間を有効活用するためにも有益であり、積極的に活用すべきものという意識を醸成していくことがより大切になるだろう。