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便秘薬(下剤・浣腸)歴史市場シェア

2026年5月29日歴史・グラフ更新

刺激or非刺激? 下剤の近代史

明治時代まで続いた和漢薬人気

江戸時代に発展した蘭学の流れから、1823(文政6)年には、ドイツ人医師・シーボルトによって、酸化マグネシウム(塩類下剤)がもたらされ、日本国内でも医療用薬として知られるところとなっていく。
一方で、民間では「便秘はお腹に溜まった砂のせいで起き、蒟蒻を食べると砂が下り、便秘が解消する」という言い伝えが残されていたこともあり、千年以上親しまれてきた和薬・漢方薬も根強い人気を誇った。コレラや赤痢などの疫病の流行と比例するように、大黄の輸入量が上下した記録も残されている。西洋薬が普及したのは明治30年代以降のことであった。

刺激性下剤の登場

1969(昭和44)年には、日本ヴィックス(後のP&G)が便秘薬の黒船となる「コーラック」を発売。腸に直接働きかけ、蠕動運動を高め、比較的強い作用でスムーズな排便を促す薬効成分ビサコジルと、古来から欧州で親しまれてきたセンナ由来のセンノシドを配合した“刺激性便秘薬”が一般用医薬品として普及し始める。1978(昭和53)年には、エスエス製薬からも同様の製剤設計の「スルーラック」が発売された。

国内で栽培した「信州大黄」を用いた「タケダ漢方便秘薬」

1973(昭和48)年、武田薬品工業(現:アリナミン製薬)が、古くから便秘に用いられてきた漢方処方の大黄甘草湯を「タケダ漢方便秘薬」として発売した。
「タケダ漢方便秘薬」のこだわりは国内産の原料を配合したことだった。それまで、便秘薬の原料である大黄は輸入に頼っていたが、含有成分センノシドの量や品質にばらつきがあった。そこで、高品質な原料を安定供給するべく、同社は国産大黄の品種開発に着手。20年以上かけて国産大黄の第一号「信州大黄」の栽培に成功し、国内栽培の原料を配合した便秘薬が誕生したのだった。その後、甘草に関しても国内初の品種「都甘草」の開発に成功し、2023年からは、信州大黄に加え都甘草を原料とした「大地の漢方便秘薬」としてリニューアル販売されている。

1987(昭和62)年には、ゼリア新薬工業から、新たに便自体を膨潤させる食物繊維プランタゴ・オバタを配合し、「自然に近いお通じ」を訴求した「ウィズワン」シリーズが登場。肌ケア成分を付加した新しい切り口の商品も投入しながら、需要を開拓していく。

便に水を含ませ、柔らかくしてカサを増すことで、排便を促す。新しい膨潤性下剤として登場した「ウィズワン」

1997(平成9)年には、市場シェア30%、年間売上50億円を超える大型商品であった「コーラック」を、大正製薬が買収。トップシェアブランドの育成、大衆薬強化を図っていた同社が今後の伸長を期待して踏み切ったものであった。

2000年代に入ると、各便秘薬ブランドが「自然志向」等の付加価値をプラスしたシリーズ商品を拡充。総合ブランド化を目指す方向性でリニューアルを行っていく。コーラックは2000(平成12)年におだやかな効き目の「コーラックソフト」、生薬由来の「コーラックハーブ」を発売。2012(平成24)年には、「ウィズワン」がブランドリニューアルを実施。その後、炭酸ガスによる刺激で排便を促す坐剤も投入した。

「おなかが痛くなりにくい」便秘薬が拡大

2010年代は、自然志向の便秘薬がより広がりを見せた時代であり、2015年には、便に水分を与えて軟らかくする水分浸透成分DSS(ジオクチルソジウムスルホサクシネート)を配合した、新しい便秘薬「オイルデル」が小林製薬より上梓された。

健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」。シーボルトによる伝来から193年後の2016年に発売された

そして、2016(平成28)年、健栄製薬が医療用としても用いられていた酸化マグネシウム製剤を元に「酸化マグネシウムE便秘薬」を発売。腸の内容物に水分を含ませることで、排便を促す薬で、腹痛が起こりにくく作用もゆるやかで、習慣性もないため安心感が高い。自然な排便リズムをサポートする医薬品として、多くの医療機関でも患者へのファーストチョイスとして勧められている。
開発過程では、既存の散剤から服用しやすい錠剤へと改め、独特の苦みを感じさせないレモン風味に調整した点など、相当な創意工夫と不断の努力があったという。

酸化マグネシウム配合の便秘薬は、「おなかが痛くなりにくい」という特徴を訴求したことで、エントリーユーザーの需要を伸ばし、2019(平成31)年4月に「コーラックMg」(大正製薬)、2021(令和3)年4月に「スルーラックマグネシウム」(エスエス製薬)、10月に「ビオフェルミン酸化マグネシウム便秘薬」(ビオフェルミン製薬、販売元:大正製薬)と、発売が相次いだ。

かつては、「コーラック」や「スルーラック」が刺激性の便秘薬の代名詞となっていたが、現在では、両ブランドともに食物繊維や酸化マグネシウムを配合した非刺激性もラインナップし、さまざまなニーズに対応するブランドとして発展している。

便秘の状態や、それをどう解消したいかというニーズは、人それぞれ。「しっかり出したい」だけでなく、「毎日自然に出したい」「便秘薬をクセにしたくない」など、自分に合った便秘薬を選びたいという生活者のニーズに応えるかたちで、選択肢を広げてきた結果ともいえるだろう。

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